遺言の内容が不明確な場合はどうなるのでしょうか? 弁護士 清水孝行
こんにちは!弁護士の清水です。
被相続人が作成した自筆証書遺言が発見され、裁判所の検認手続を受けて内容を確認したところ、遺言の形式的な点に問題はないものの、不動産の表記が不明確である場合や(「A子に柿の木がある裏庭の土地を相続させる。」など。)、文言が不明確な場合(「●●をB男にてしっかり守っていって欲しい。」など)、その遺言は全く無効になるのでしょうか。
遺言者の意思が遺言書の表示から一見して明らかでないときには、その遺言についての解釈が必要になります。遺言は遺言者が亡くなる前の最終意思を確保するものですし、相手のある取引行為でもありませんので、できるだけ適法有効なものとして遺言者の真意を探求することになります(大審院昭和5年4月14日判決)。ですので、遺言書の中の特定の条項を解釈する場合、遺言書全ての記載との関連や、遺言書を作成した当時の事情、遺言者の置かれた状況などを考慮してその真意を探求し、その条項の趣旨を確定します(最高裁昭和58年3月18日判決)。
裁判例をみると、「私の現在の財産年金の受給権は妻には一切受取らせないようお願いします。」という自筆証書遺言がある場合、遺言の文言に加え、この夫婦が事実上離婚していること、その他の事情から、遺言の趣旨を、妻の相続権をはく奪する(法律用語で「廃除」といいます。)意思を表したものであるとしました(広島高裁平成3年9月27日判決)。
したがって、最初に挙げた遺言について、たとえ文言が不明確であっても、他の文言との関係、作成者の状況、財産状況等を踏まえ、可能な限り有効な遺言として取扱うことになります。